「電源が入らない」よりも厄介なのが、“たまに動く”“出力が安定しない”という症状です。
修理現場では、こうした「壊れかけのまま使われている」業務用脱毛機が多く見受けられます。
一見、電源が入るだけで「使える」と思いがちですが、その裏では電源ユニットや制御基板、コネクタ部が限界まで劣化しているケースも。
今回は、電源が入らなくなる前に現れる危険な前兆と、その見分け方・対策方法を詳しく解説します。
電源が入らなくなる前に起こる3つのサイン
① ファンの音が変わった・動作時にノイズが増えた
冷却ファンの回転音が以前より大きくなったり、時々“ジジッ”というノイズが混じるのは、内部の電源ユニットやコンデンサが弱っているサイン。
この段階で放置すると、発熱によって電源基板が焼損する恐れがあります。
② 出力ムラや反応遅れがある
ハンドピースの出力が安定せず、「照射できたりできなかったりする」「時間をおけば使えるようになる」といった現象も要注意。
電圧が不安定な状態で無理に使用を続けると、出力制御回路の部品の破損につながる可能性があります。
③ 電源ランプが点滅・一瞬消える
「電源ランプがチカチカする」「電源が落ちてまた入る」などの症状は、接触不良や電源ラインの半断線が疑われます。
特に多いのが、コネクタ部の角度を変えれば動くという現場の“延命テク”。
その場では復旧しますが、内部ではスパーク(微小な放電)が起き、のちに基板焼損を招くことがあります。
“動くけど不安定”を放置すると起こる二次故障
「たまに調子が悪いけど、動くから使っていた」──このパターンが最も危険です。
一時的な応急処置や角度調整でごまかしても、内部では確実にダメージが進行しています。
- 電源ユニットの焼損(焦げ・発煙)
- 基板上のパターン剥離や破損
- 出力制御異常によるショートリスク
特に、“時間をおけば使える”=電源系の熱膨張・収縮で一時的に通電している状態であり、再発はほぼ確実です。
オーナーが自分でできる安全確認方法
完全な分解点検は専門技術が必要ですが、日常的にできる「異常の早期発見」は可能です。
1️⃣ アース線の有無を確認
→ アースが接続されていないと、漏電時に電源が落ちず、内部破損を助長します。
2️⃣ 電源プラグ・延長コードの温度チェック
→ 通電中にプラグが熱くなるのは要注意。接触抵抗が高くなっています。
3️⃣ 異臭・発熱・焦げ跡を観察
→ 電源スイッチ周辺や吸気口からの“焦げ臭さ”は早期点検のサインです。
4️⃣ 電圧変動の確認(テスターがあれば)
→ 出力時に電圧が急変する場合、内部のコンデンサ劣化や配線断線が考えられます。
修理費を抑えるには“初期反応”が9割
実は、電源が完全に入らなくなってからの修理よりも、「違和感の段階」で点検依頼をいただく方が修理費用を半分以下に抑えられるケースが多いです。
たとえば、電源ラインのコネクタ緩みであれば、軽微な補修で済みます。
しかし、これを放置すると電源ユニット全損・基板交換となり、十数万円から数十万規模の出費につながります。
実際の現場から学ぶ「壊れかけ脱毛機」の末路
弊社の修理実績では、以下のようなケースがありました。
- 電源が入らなくなった原因が、“接続部を無理な角度で押さえていた”ことによる内部断線。
- 出力不安定を放置した結果、ハンドピース側の回路まで過電流が流れ、双方が焼損。
- 「時間をおけば使える」状態で使い続け、コンデンサが破裂し、基板が炭化したケース。
いずれも、“動くうちは大丈夫”という判断が命取りになっています。
まとめ:故障は突然ではなく「予兆」から始まる
故障は突然起こるものではなく、必ず“前兆”があります。
「まだ動くから大丈夫」ではなく、「動くうちに整える」ことが、本当のリスク対策です。
脱毛機は店舗の“相棒”であり、日々の売上と信頼を支える存在。
定期点検や軽度の不調時の早期対応こそが、長く安定して使うための最善のメンテナンスです。